介護施設の日常

認知症の方とのコミュニケーション

2025年には約675万人と65歳以上の5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。

施設でも認知症を有している方は多く、症状は様々です。

そして認知症の方には日々振り回さえています(笑)

認知症と聞くとネガティブな印象かもしれませんが、私にとっては面白いのです。

1.寝たきりのSさん

寝たきりの女性Sさん。脳血管疾患から、会話ができず、いつも斜め上の誰かと話している様子です。

その会話は不明瞭ですが、笑ったり、怒ったり、時には叫んだり忙しく、楽しそうです。

どうしても私はその人の視界の中に入りたくて、あわよくば会話がしたくて、真正面から顔を覗き込んで、笑顔で名前を何度も呼びます。「おはようございます、Sさん、Sさん」

どこかを見ていたSさんの瞳が、やっと私を捉えてくれました。その時、

「うっさいねえ」

と言われてしまいました。そしてニコっと笑ってくれます。今日も成功です。つながったと実感します。

何をするにも顔をみて声をかけてから私を認識してもらってから処置をします。

意味ないでしょと思われるかもしれないですが、これが私の日々の楽しみです。

2.息子が大好きなHさん

Hさんはよちよちと歩く女性の方です。最近は何度も「息子が帰ってこない」とがたがたと車いすを揺らして探しに行くと訴えます。何度も転んでいるので介護スタッフはHさんに振り回されてクタクタです。

息子さんは立派に成人され、結婚され、お子さんもおりますので心配はご無用です。

だけどHさんの中では息子さんは、11歳、14歳、ある時は大人であったりと話は大混乱、Hさんも私たちも大混乱です。

これが認知症の頭の中なんですよね。私は認知症の方と会話するときのイメージは、今その人が信じている時代に乗り込み、話をそのまま進めて、心配なことを解消すること、混乱をまっすぐにするイメージです。

「息子が帰ってこないのよ、心配」→「息子さんいくつですか?」→「14歳なのよ」→「今の時間は部活でしたよね、頑張ってますもんね」→「そうよね、だけど心配なの」→「息子さん遅くなる時は連絡するって言ってましたよ」→「いつも連絡よこさないのよ、まったく」→「反抗期ですもんね、距離感も大事ですよ」→「そうよね、心配しないようにするわ」

みたいな会話をします。効果は数分しか持ちませんけど(笑)とにかく話を一本筋にしていきます。

どこまでもお母さんだなって思います。娘さんのことは全く心配しないのはなんでなんでしょうかね?

3.毒舌K子さん

色素の薄い瞳の一見おしとやかそうなk子さん。お話してみると、支離滅裂でまあまあの毒舌。

ご主人の後を一歩遅れて歩くんですが、ご主人に行動が遅いとごはんの後、食堂に置いていかれます。

そんな姿をみてお部屋に帰りましょうと声をかけると、

「あの男、1人が(K子さん)頭がおかしかったら一緒に連れて帰るでしょうが。まったくあの人もおかしいわ」

「見かけも悪いのに結婚してやったんだよ、かわいそうだったから」など毒舌のオンパレード。

そうかと思えば、私の胸をタッチして楽しそうにセクハラ。怒る気にもなれず憎めないキャラなんです。(時々私もやり返す)

これまで一歩後ろを歩いてきたのに、色々と苦労をされたんだな、そんな気持ちだったんだなと思ってしまいます。

認知症の方に「気持ち」は存在します。その思いを大切にいつも関わっています。

関りは一筋縄ではいかないことばかりですが、こんな日常を楽しんでいます。

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